子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「ところで、紬。明日は早く帰れそうなんだ。夕飯になんか買って帰るから、作らずに待ってて」

「うん。わかった」

内心、楽ができてラッキーなんて、パンパンになったお腹を撫でてたんだけど……



「ただい……」
「おじゃまします!!」

柊也さんの声に重ねるように、女の人の声がして、ビクッとする。

「な、なに……?」


「おい、由希。待てって」

バタバタと何かを追いかけるような遠慮のない足音に、思わず身がまえた。

「ああっ!!紬さん?」

現れたのは、私と同年代ぐらいの女性だった。

私がコクンと頷くと、ずいっと近付いて抱きつこうとした、その寸前。「危ないだろ」と、柊也さんが彼女の腕を引いて止めた。

「紬は妊娠中なんだぞ!!」

「あっと、ごめん、ごめん」

えっと……誰?

「紬、こいつが今、うちに手伝いに来てる由希」

「はじめまして!!」

ああ、私が本命だと勘違いした子ね。
なんというか……元気だな。

「はじめまして」

とりあえず挨拶を返すと、柊也さんが割って入った。

「紬、悪い。ケーキでも買って帰ろうとしてたら、こいつに捕まった」

「捕まったって、失礼しちゃうわ。柊兄の奥さんに会わせてって、ずっと言ってたじゃないの!!」

私そっちのけだな。
なんだか、本当の兄妹みたい。



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