死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
梓だってこんな顔で別れるのは嫌だった。


「俺は消える。その前に、返事を聞かせて」


そう言われて梓はハッと息を飲んだ。


そうだ、自分はまだ返事をしていない。


厚彦に返事をしなければ成仏しないのではないか?


そんな考えが浮かんできた。


「ダメだよ」


厚彦が梓の気持ちを呼んだように言った。


「でもっ……!」


「梓だって、今まで沢山の霊を見てきただろ? この世に残って幸せそうにしていた霊がいるか?」


その質問に梓はグッと返事に詰まった。


みんなそれぞれの理由でこの世にとどまっていた。


でもその誰1人として、笑っている霊はいなかったじゃないか。


この世に残ることで、厚彦もいずれどうなるかもしれない。


感情を無くしてしまったり、ずっと泣いたり怒ったりしているかもしれない。


好きな人をそんな風にはできなかった。
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