Romantic Mistake!
中に入り、キョロキョロしながら一階の売場のお姉さんを「あのー」と呼び止めようとすると、そこへ「仁科さん!」と大きな声を出して駆け寄ってくる男性がひとり。
「桜庭さん!」
数時間前に会った彼と本日二度目の対面になるけど、やっぱり何度見てもキラキラしている。圧倒されながらも再会できた安堵でこちらも彼へと駆け寄った。
「ああ、申し訳ありません、なんとお礼を言ったらいいか……!」
どうやら来てすぐのこの場所で私を待っていてくれたようだ。私たちはまるで感動の再会を果たしたかのように引き寄せられ、抱き合う一歩手前までいき、ハッとしてお互いに止まった。いけない、いけない。抱き合ってはダメでしょう。
「こちらが桜庭さんのお荷物です。中を確認してもらえますか」
さっそくスーツケースを桜庭さんに引き渡した。彼はうなずき、そばに控えている秘書のような眼鏡の男性に合図をすると、男性は「失礼」と言いスーツケースを受け取って先にオフィスビルを出ていく。
「仁科さんも、僕と一緒にあちらのテナントへ来てください。場所を変えて改めてお礼を言わせていただけますか」
「えっ、えっ、そんな」
「お願いします。お疲れでしょう。茶屋の個室をとってあるので、お茶を飲んで休んでください」