Romantic Mistake!
さすが気遣いのできるジェントルマンだ。必死でここまで来たから今ちょうどお茶を飲みながら和菓子でも食べたいと思っていた。
和菓子屋や和風レストラン、呉服店が入ったビレッジ内のテナントに移動し、足を伸ばせる和室へ通された。茶室のように畳み張りで、十畳くらいある広い個室だ。真ん中に置かれたテーブルで桜庭さんと向き合って座り、部屋の隅では秘書さんが荷物の中身を確認し始める。
出されたあんみつを遠慮なくいただいていると、向かいに座る桜庭さんに頭を下げられた。
「改めまして、仁科麻織さん。ご旅行中にもかかわらず、僕のせいでご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。なんとお礼を申し上げたらいいのかわかりません」
こんな綺麗な男性にきっちり頭を下げられた経験はなく、あんみつの白玉でむせ返った。
「いえいえ、べつに桜庭さんのせいではありませんから」
「後ほど、かかった費用と気持ちばかりの金額をお渡しさせてください」
「そ、そんな。なんだかすみません」
秘書さんが確認を終え、ついさっき渡したスーツケースとそっくりのものを私の隣へそっと置く。
「そちらも、仁科さんのものでお間違いないか確認していただけますか」
桜庭さんに促されて私はうなずき、中を開く。このちょっと大雑把な収納、間違いなく私のものだ。
「わ、私のです」
これ見られたのか、恥ずかしいな、と少しずんとした気持ちになりながら、蓋をするようにすぐに閉めた。