アオハルの続きは、大人のキスから


 こちらに視線を向けていた久遠だったが、ふと目の前にある白無垢に視線を動かす。

 自身から視線がそれたことに安堵しつつ、小鈴も彼に習って白無垢に視線を向ける。そこで、小鈴がこの場にいる理由を思い出す。

「久遠さん。あの……仕事の話は」

 明らかに逃げだ。だけど、今更彼に恋心を曝け出すわけにもいかない。

 ビジネスライクな付き合いを全面的に押し出さなくては、きっと彼の近くにいられなくなる。
 慌てて体裁を取り繕うとすると、彼は白無垢を指差す。

「これが仕事だ」

「え?」

 意味がわからず久遠を見つめると、彼は真顔で言い切る。

「白無垢を着て、結婚式をする。それが仕事だ」

「……意味がわかりませんが」

「ようやく小鈴が俺の元にやってきたんだ。逃がすつもりは毛頭ない」

「っ」

「手始めに……」

「し、失礼いたします!」

 久遠の言葉を遮るように叫んだあと、ペコリと頭を下げる。そして、彼の制止を聞かず部屋を飛び出した。

 すぐさまエレベーターに乗り込むことができた小鈴は、ギュッと袂を掴む。

「手始めに……なにする気ですか、久遠さん!」

 小鈴ひとりしか乗っていないエレベーターの中で小さく呟く。


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