アオハルの続きは、大人のキスから
椿に相談したくとも、彼女は再び外国の地に行ってしまった。仕事で忙しく飛び回っている彼女に救いの手を求めるわけにはいかない。
そうでなくとも、椿にも関係してくることだ。もし、山野井の跡取りの件で小鈴が悩んでいて窮地に立たされていることを知ったら、間違いなく責任を感じてしまうだろう。
だからこそ、できれば椿の耳に入れずにこの件を片付けてしまいたいというのが本音である。
問題はそれだけではない。久遠のバックについても頭が痛い。
まさか、彼の立場がそんなに大変だったとは思いもしなかった。
ベリーヒルズビレッジ一帯は旧財閥が所有しているらしいのだが、その旧財閥家当主の甥が久遠だという。
俊作と久遠は小中高と同じ学び舎で過ごした仲間。となれば、俊作が言っていることは本当なのだと認めざるを得ない。
久遠がそんな大きな家と繋がりがあり、彼が将来的に当主になり得る可能性があるのに、小鈴は彼の傍にいてもいいものだろうかと胸の奥がざわつく。
小鈴には、なにもない。両親もいなければ、財もない。名声も立場もなにもない。ごく普通の一般女性だ。
そんな小鈴が、彼のプロポーズを受けて本当に大丈夫だろうか。そんな不安が日を追うことに小鈴を苦しめている。
模擬結婚式まであと二週間。そのときまでは返事をしないでほしいと久遠に頼まれていた。だからこそ、好きだという気持ちを告げたくても告げずにいたのだが……
告げない方がいいのかもしれない。そんな後ろめいた気持ちが小鈴に襲いかかってくる。
だが、今はあまり考えたくない。こうして久遠と一緒にいることができる時間を堪能していたい。