アオハルの続きは、大人のキスから


 それだけ言うと、俊作はショッピングモールへと足を向ける。学生時代では考えられない着物姿。粋に着こなす彼の背中は、いつもの飄々としてクールな様子とはかけ離れている。

 そんな背中に、久遠は声をかけた。

「俊作」

 久遠の声に反応した俊作は、久遠に背を向けたまま足を止める。そんな彼に、俺は宣言する。

「小鈴はお前にはぜってぇ渡さない。渡せないから」

 久遠の言葉に俊作の肩が揺れる。そして、ゆっくりと振り返った。

「そうか。だが、まずは小鈴の憂いをなくすところからだな」

「は?」

「憂いの原因を作ったのは私ではあるが……お前も小鈴の憂いの原因になっているから」

「どういう意味だ?」

 俊作が言う〝小鈴の憂い〟に久遠も関与しているとは一体どういうことなのか。全く意味がわからず眉間に皺を寄せていると、俊作はベリーヒルズビレッジ全体を指差す。

「お前、ここの所有者の血縁者だろう? そして、いずれは引き継ぐ」

「……なんのことだ?」

「とぼけなくてもいい。皆、知っていることだ。もちろん、小鈴もね」

「っ!」

 顔色を変えた久遠を見て、俊作はフフッと自虐的に笑った。
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