キス、涙々。


「あのっ!」

「言われなくても、明日までにちゃんと落として──」

「そのネイル、違反だけど、すごく可愛いと思いますー!」


振りかえった女の子はぽかんとしていたけど、またすぐに真っ赤になってそっぽを向いた。



「この子、照れてるだけだから気にしないでー」

「余計なこと言わないでよ!!」


なんて言い合いをしながら歩いていく女の子たち。



今日も今日とて不本意ながら。

わたし、八尾ましろは風紀委員をやっている。


去年の冬に交渉した服装規定の一部見直しが認められて、派手じゃないピアスはつけてもいいことになった。


だけどまだまだうちの服装規定は他校に比べたら桁違いに厳しい。


だからわたしも厳しく指導しなきゃいけないんだけど、前みたいにびくびく怯えながら指導することはなくなった。



それはわたしが変われたのか、みんなが変わったのか。


はたまた最初から、なにも変わっていなかったのか。


ともあれ、わたしはただの風紀委員じゃなくなった。

と、いうのも……


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