キス、涙々。



指導も大詰めになった頃。

すこし離れたところで最後のひとりを終わらせた加賀屋くんが声をかけてくれた。



「八尾!こっちはもう終わったぞ」

「あ、うん!わたしのほうも終わっ────」


たから戻ろうか……

と言おうとした瞬間だった。





「ヤオ!」

「わっ、ぅわっ!?」


どーんとなにかがぶつかってきて、倒れそうになる。


日々の戦い(という名の指導)で培った体幹で、なんとか堪えた。


わたしは誰かに抱きつかれていた。

もう誰なのか、確認しなくてもわかるけど。


……なんなら来るって、ちょっと予想してた。



わたしを抱きしめていた人物が、顔を覗きこむようにしてにやりと笑った。



「順調ですか、ましろ風紀委員長」

「ハギくんのせいで不調になりそう」

「ふーん。あまのじゃくめ」



そう、わたしは風紀委員長になった。


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