【短編】私がお母さんでいい





そして雪菜と良太の旅行の日



2人は那雪ちゃんを連れて私の家のインターホンを鳴らした



「こんにちはー」


良太が陽気に挨拶をする





「こんにちは」


私が返すと


「いやーほんとにいいんですか?お姉さん」


申し訳なさそうに良太が言う


「うん、全然いいよ」


雪菜と良太の間には那雪ちゃんがいる


那雪ちゃんは不思議そうに私を見ていた




「前に会ったことあるよね?那雪ちゃん」


私が腰を低くして那雪ちゃんに話しかけると


「那雪?よろしくお願いしますは?」


雪菜がそう言うと那雪ちゃんはペコッと頭を下げて


「おばちゃんよろしくお願いします」


「お、おば……!?」


おばちゃん…


私まだそんな歳じゃないよね??


「こら!那雪!沙友理さんって呼びなさいって言ったでしょ?
確かにお姉ちゃんはもうすぐ三十路だけど!」


「一言余計なんだよね」



そんなやり取りをして



「これ、那雪が好きな絵本とおもちゃね、
あとこれが那雪の好きなアニメのDVD
それで、これ那雪の好きなご飯と嫌いなご飯が書いてあるからこれ見てご飯決めて
あとぐずってお風呂入らない時あるから無理矢理入れていいからね
あとご飯の支度手伝うって言うかもしれないけど
物とかすごく壊すから手伝わせないようにね
あと」


「もうそんなに心配しなくてもいいってば」



私は雪菜の言葉を遮る



「だってー親としては心配だもんー」



親としてはか……


私たちの両親もその気持ちだったんだよ?



そんな言葉は心の中に置いといて



「那雪ちゃんはいい子そうだから大丈夫だよ」


「うん、そうだね、じゃあお姉ちゃん、よろしくね!」


「よろしくお願いします!」



雪菜と良太は笑顔で手を振った



幸せそうだなー



夫婦かー悪くないのかもしれない



2人の幸せそうな姿を羨む自分の気持ちを閉ざすように

ドアを閉めた





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