箱崎桃にはヒミツがある
 


 その日、箱崎桃は深く反省していた。

 今まで生きてきたすべてを。

 何故、こんなことになってしまったのか、と思いながら。

 何故、今……、

 私は歯医者の診察台の上に乗っているのか。

 私がなんの悪いことをしたというのか。

 一体、どんな前世の(ごう)(むく)いにより、歯医者に来るハメになったのか。

 歯が欠けたようだが、歯医者に行きたくないっ、とブルーになっていた桃に父、兼久(かねひさ)が言ったのだ。

「桃、ベリーヒルズビレッジの中の総合病院の歯科にいい先生がいるらしいぞ。
 個室の治療でなかなか予約もとりづらいらしいが、父さんとってやるから行ってこい。

 若くてイケメンらしいぞ」

 いや、若くてイケメン様なお医者様の前で口を開けたり、治療されて叫んだりするとか、どんな拷問。

 と思いながら、桃は診察台の上で、治療が終わった時間へのタイムワープを試みたりして待っていた。
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