箱崎桃にはヒミツがある
 桃は思わず、広い部屋の中を見回した。

 ……やっぱ、一人暮らし寂しいな~。

 それこそ、猫でも飼うかな、と思う。

『たまにモデルをやってるだけのニート』と親が周りの人間に言って歩いているので、桃は周囲の人から、

「早くちゃんと就職しなさいよ」
とか、

「早く結婚しなさいよ」
とか、いつも言われている。

「自立しなさいよー」
も言われるので。

 仕事を変えるつもりはないから、とりあえず、一人暮らしをすることにしてみたのだ。

 だが、父親が、

「お前の稼ぎで部屋借りたりとかできるわけないだろう。
 ベリーヒルズビレッジにひとつ部屋があるから、あそこに住みなさい」
と言ってきた。

「いや、あの、お父さん。
 私、自立したいんだけど……」

「なにを言う。
 お前は仮にもモデルじゃないか。

 おかしなストーカーとか現れたらどうするっ。

 あそこなら、警備もしっかりしてるから、あそこにしなさいっ」
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