箱崎桃にはヒミツがある
 いや……、いつもたいしたことないモデルとか言ってませんかね?
と桃は思ったが、長身の桃とはあまり似ていない、小柄で人の良さそうな顔をした父親に懇願され、祖母にまで、

「桃ちゃん、一人暮らしするの?
 ちゃんとしたところに住んでよ」
と心配そうに見られ。

 おばあちゃんっ子の桃は断り切れずに、このベリーヒルズビレッジにある家に住むことになってしまったのだ。

 ……なんにも自立できてないな。

 おまけに、此処に住み始めてすぐの見合い話。

 そして、見合い相手は、ベリーヒルズビレッジ内にある総合病院の歯医者さん。

 すべてが罠のような気がする……。

 もしや、お父さん、私の歯が欠けるように、なにか仕込んでたとかっ?
とまで桃は深読みしてしまう。

 いや、歯が欠けたのは、友だちと行った中華の店で、柔らかい角煮を食べたときだったので、なにも関係ないはずなのだが。

 桃の頭の中では、父親が、ふふふふ、と笑いながら、中華鍋になにかを入れていた。
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