箱崎桃にはヒミツがある
「お父さんはハラハラされないのか?」

「あの人は膝を打って笑うと思いますね~」

 目に浮かぶようだ……と言いながら桃は客席で爆笑している父を思い浮かべる。

 前菜でお腹いっぱいになっちゃったな、と思った頃、海老とブロッコリーのトマトクリームパスタがやってきた。

 物凄くいい匂いがするが、なめらかでこってりしていて。

 普段少食なので、結構、お腹に来そうだな~、と思ってしまう。

「先生」
と桃が呼びかけると、前菜を軽く平らげている貢がこちらを見た。

「すみません。
 お父さんが見合いなんて頼んじゃって」

「……お前は結婚する気はないのか?」

 はあ、と曖昧な返事をした桃は、

「まだなんかピンと来ないんですよね~。

 とか言ってたら、友だちには、あんたは誰かが強引にセッティングしてくれない限り、永遠にピンと来ないまま結婚しないよって言われるんですけどね」
とぼんやり言った。

 自分でも確かにそんな予感はしている。

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