箱崎桃にはヒミツがある



 箱崎桃の朝は一杯の薬草茶から始まる。

 白湯は挫折した。

 白湯もほんのり甘いのだが、もっと味を感じたい。

 不味(まず)くても……と思ったのだ。

 おえっ、てくらい不味くても、味がある方がいい。

 そう思いながら、桃は八十歳手前にして、まだ美肌を保っているおばあちゃんお薦めの薬草茶を口にした。

 おえー……。

 一瞬で挫折しそうになる。

 そうだ、味の濃いチョコを大量に食べて飲めばっ!

 って、刺激物~っ!

 桃はよく煮出した薬草茶のダメージに、まだピカピカのペニンシュラキッチンに縋りつくようにして、ヘタリ込む。

 うう。
 肌を綺麗にしようとして、刺激物に手を出しては本末転倒だっ、と思う桃は。

 次なる結婚話を避けようと、とりあえず、貢と見合いしようとしていることこそが、なによりも本末転倒になりつつあることに気づいてはいなかった。



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