箱崎桃にはヒミツがある



 来島がお茶しながら、スケジュールの話をしようと言うので、二人で近くに新しくできた屋上にあるオープンカフェに出かけた。

 雨とか降ったとき大丈夫なのだろうかと不安になるような、真っ白で立派なソファに腰掛け、桃は訴えた。

「……あの~、まだちょっと風が冷たいみたいなんですけど」

 初夏なのだが、高層ビルの谷間にある、ちょっと低めのビルなせいか。

 ビル風が吹きすさんでいる。

「いやいや、これがいいんじゃない。
 すがすがしい風だわ~」

 薄手のシャツ一枚の来島はそんな強がりを言ったあとで、

「で、なにがあったのよ」
と身を乗り出し、訊いてくる。

 あったかいココアにしてよかった、と寒さが苦手な桃は思いながら、歯が欠けてからの話を来島にした。
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