箱崎桃にはヒミツがある
「イケメン歯科医と見合いなんて、いいじゃないの。
 もう結婚したら?」

 その口調に桃は不安を覚え、訊いてみる。

「それ、私にモデルとしての見込みはないから、やめろって話ですかね?」

「だって、桃はいまいち、やる気が感じられないのよねえ」
と仕草と口調が柔らかいせいか、女性的に感じられる来島が言う。

「やる気はありますよ~。
 顔と態度に出ないだけで」
と言って、

「……それ、あるうちに入らないから」
と言われてしまった。

「あ、桃、まつげパーマ、とれかけてるよ」

 この寒いのに水出し珈琲を飲みながら、来島が言ってくる。

「あんた、自分で、まつげ上げらんないんだから、行っときなさいよ」

「週末ショーですが、大丈夫ですかね?」

 かぶれたりしないかな、と思いながら、桃はまつげに指をやってみる。
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