極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
「……仕方がないな」
梨乃を抱き上げて寝室のベッドに運ぶ。
布団とかけようとしたら、彼女が急に寝返りを打って俺の手を掴みそのままベッドに倒れ込んだ。
「ちょ……梨乃、意外に力強いな」
苦笑いしながら起き上がろうとしたら、彼女が俺にしがみついた。
「……ひとりにしないで……お兄ちゃん」
その悲しそうな声に胸が痛む。
また何か辛い夢でも見ているのだろうか。
「行かない。一緒にいるよ、梨乃」
優しく声をかけてその華奢な背中に手を回すと、しばらくして彼女の寝息が聞こえてきた。
しばらくこうしていよう。
梨乃を守るように抱きしめる。
あどけないその寝顔。
女性の寝顔をこんなにじっくり間近で眺めるのも初めてかもしれない。
人形のようにまつ毛が長くて、化粧を落としたその顔は可愛くて二十歳くらいに見える。
布越しに伝わってくる彼女の温もり。
このままずっとこうしていたい。
そんな感情が湧き上がってくる。
「滝川に毒されたかな」
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