極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
『どうした?どこか痛いのか?』
『お腹が……痛くて……』
腹部を押さえる私を見て優はスマホを取り出した。
『救急車を……』
『待って!……私……生理なんです。鎮痛剤とナプキンを買いに行きたく……』
慌てて止めて彼に事情を話す。
生理痛で救急車を呼ばれてはたまらない。
恥を忍んでそう伝えたら、彼は『ああ』と小声で答えて私を抱き上げてリビングのソファに運んだ。
『梨乃は休んでろ。俺が買ってくる』
そんなやり取りをして、優にナプキンを買いに行かせてしまった。
そんなのお兄ちゃんにだって行かせたことはないのに。
優はその名前の通り優しい。
その優しさはお母さん譲りだと思う。
先週、彼のお母さんとランチを一緒に食べたのだけど、『私、すごく娘が欲しかったの。一度でいいからお母さんって呼んでもらっていい?』とお願いされた。
『はい。お母さん……でいいですかね?』
お願いされるままそう呼んだら、優のお母さんが目をキラキラさせて私に抱きついた。
『いいわ。もう一回』
『お母さん』
「もう一回いいかしら?』
そんなやり取りが何度も続いた。
あまりにも感動されたので、もうそのまま彼女のことを「お母さん」と呼ぶことになった。
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