極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
「うっ!」
「くだらない話はいい。もう時間がないから行くぞ」
腕時計に目を向けると、もう八時を過ぎていた。
梨乃の手を掴んで家を出て、マンションの駐車場にある車に乗り込む。
「私……後部座席に乗っていいですか?」
助手席のドアを開けて後部座席を指差す彼女に向かって首を横に振る。
「ダメだ。そんなに周りを気にするな。梨乃はもっと堂々としていればいい」
梨乃に欠点があるとすれば、自信がないところ。
ちょっと厳しく返すと、彼女は観念したのか大人しく助手席に座ってシートベルトをした。
「斬首台に行く囚人みたいな顔になってる。大丈夫。梨乃が思ってるほど嫌がらせする奴なんていない」
梨乃の頬を優しく撫でると、車を発進させた。
両思いになったはいいが、彼女には不安もあるようだ。
まあ、社内恋愛は周囲の反応も気になる。
だが、周囲に俺たちの関係の邪魔はさせない。
会社に着いて車を降りると、彼女は目をキョロキョロさせて他の社員がいないか確認する。
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