極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
ドアを見据えてそう返すと、滝川が入ってきた。
「悪い。ちょっと遅れた。今さっきドアの前で藤原さんとすれ違ったんだけど、何かあった?なんか血相変えて走ってったけど」
彼の言葉を聞いて俺と朝井は目を合わせた。
「ひょっとしてさっきクモがいて北條くんに咄嗟に抱きついたところを見られたのかも」
朝井が顔を青くしてそんな説明をすると、滝川が納得した様子で相槌を打つ。
「お前クモだけは苦手だもんなあ。じゃあ、それを見て藤原さんは朝井と北條のこと勘違いしたんじゃないか?俺も何も知らずに目の前でふたりが抱きつくとこ見たら妬ける」
彼の予想に小さく頷いた。
「彼女が血相を変えて走って行ったならそうかもしれない」
何か必要なものがあって資料室にきたが、俺と朝井を見て慌てて逃げたのだろう。
「こらこら、そんな落ち着いたこと言ってていいのか?今すぐ彼女を捕まえて誤解を解いておいた方がいいと思うぞ」
滝川が俺にそうアドバイスするが、すぐに梨乃を追わなかった。
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