極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
私よりも朝井さんの方が彼にお似合いだ。
パリンと私の中で何かが音を立てて崩れていく。
ショックで踵を返して自分のオフィスに走って戻ろうとしたら、滝川さんとすれ違った。
「あれ?藤原さん、そんな青い顔してどうしたの?」
頭の中はぐちゃぐちゃで、その質問に答える余裕なんてない。
何も答えず、そのまま走ってオフィスに戻ると自分の席に着いた。
「藤原さん、顔色悪いですよ。やっぱり早退した方がいいんじゃないですか?」
朝井くんが私を見て早く帰るよう勧めてくれたが、「大丈夫」と小さく返して海外からのメールを処理する。
何も考えないようにしようと思ってもさっき見た光景が頭から離れなかった。
キーボードを打つ手が何度も止まる。
私って……馬鹿だ。
両親を見て本当の愛なんて存在しないってわかっていたはずなのに、社内一のイケメンに口説かれ舞い上がってしまった。
冷静に考えれば、優のような美形で地位もお金もある人が私のような平凡な女に惚れるわけがない。
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