極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
彼は明らかに恋愛経験は豊富そうだし、私を気まぐれで抱いたのだろう。
だって朝井さんのような人が彼にはいるんだもの。
お昼休みになると、優に声をかけられた。
「藤原さん、ちょっと話があるんだが」
課長の話なのだろうか。
私が資料室のドアを開けた時、気づかれなかったはず。
いや、滝川さんと資料室の前ですれ違ったから、ひょっとしたら彼から私のことを聞いたのかもしれない。
いずれにしても今は彼と話をしたくなかった。
顔を合わせたら泣いてしまいそうだったから。
「すみません、ちょっと急ぎますので」
彼の目を見ずに逃げた。
仕事はなんとかやった。
また優に声をかけられるんじゃないかってビクビクしていたけれど、幸い彼は定時までオフィスに現れなかった。
今のうちに帰ろうって……どこに帰るつもり?
優のマンションに帰れば、また彼と顔を合わせなければいけない。
無理……彼の顔を正視出来ないよ。
だとしたら、やっぱり自分のアパートに帰るしかない。
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