極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
課長は四十半ばで髪は白髪交じり。細身で目はつり目。仕事をバリバリするタイプではなく、ただ部下に命令するだけの人だ。
「え?今からですか?」
突然の話に驚いて確認すると、課長は困った顔をして頷いた。
「明日の朝発送しないとマズイからさあ」
カタログはもう一週間前から届いていて、隣のミーティングルームに段ボールが積んである。
なのに、今言うのか。
文句を言いたくなるが、所詮私は一平社員。上司の命令に従うしかない。
横にいる咲が"断れ"と念を送ってくるも、彼女のように強く出れない私は笑顔で引き受けた。
「はい、わかりました」
「じゃあ頼むよ。なるべく残業にならないようにね」
課長は私の肩をゆっくりと叩いて、どこかへ消える。
働き方改革だかなんだか知らないが、最近は残業しにくい状況になった。
上からはなるべく残業するなというお達しだけれど、毎日定時で帰れるわけがない。
深夜残業をしても上司に睨まれるのが嫌で申請しない。
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