極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
彼が私に差し出したのはマグカップに入ったココア。
甘い匂いに心が少し癒される。
「……ありがとうございます」
礼を言ってココアを受け取り、口に運ぶ。
ほんのり甘く、ちょっとビターで大人な味。
「今日はそれ飲んだら寝ろ。もう朝の三時過ぎだし、ホテル探すとか言うなよ。そっちの方が俺にとって迷惑だから」
俺様な言い方だけど、私を気遣っているのだろう。
「すみません」
「謝るな。俺がいてまだよかったよ。梨乃ひとりだったら途方に暮れていただろ?」
北條さんの言う通り、警察や鍵の手配は彼がやってくれた。
彼がいなかったら、アパートでずっと放心していたかも。
ココアを飲み終えると、北條さんはリビングの隣にあるゲストルームに案内してくれた。
「ここ昨日亮太が泊まった部屋。シーツの替えを持って来るからちょっと待ってろ」
踵を返す彼に慌てて断った。
「いえ、いいです。すぐに横になりたいから」
「そうか。洗面所は向かい側だ。何も考えずに寝ろよ。おやすみ」
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