極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
クシュッと彼が私の頭を撫で、私のスーツケースを運んで部屋を出て行く。
ゲストルームは十畳くらいでベッドが置かれただけのシンプルな部屋だった。
スーツケースを開けて、部屋着に着替え、洗面所で歯磨きをすると、ゲストルームのベッドに横になる。
ベッドは高級で寝心地はいい。
それに、私の安いアパートと違って物音はしない。
静かだ。
なのに、頭がパニック状態で眠れない。
ひとりになると急に涙がこみ上げてきて、むせび泣く。
怖い思いをしたせいだろうか。
いつもより身体が冷たく感じる。
何度も泥棒がうちでテレビを見ていた光景が頭に浮かぶ。
怖くて怖くて……気が変になりそう。
こんな風に泣いたのは父が家を出て行った日以来かもしれない。
あの時はとにかく自分を責めた。
私が余計なことを言わばければ父と母は笑っていられたのに……。
今、私の身に起きていることはその報いなんだと思う。
私のせいで両親は離婚した。
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