リナリアの棘
その日、
玄人はいつも通りだった

嫉妬させようと思っていたが
失敗に終わった...

そう思っていたのに

帰り際玄人に声をかけられ、
駅まで二人で帰る事になった

新しい高校生活の話や相談など
昔の楽しい思い出たちの
余韻に浸っていた...が、

『優香...さっきの男って誰?』

玄人の声色は
今まで聞いた事がない程低かった

「同じ高校の友達だよ」

(もしかして嫉妬してくれてる...?)

心の奥底では嬉しいと思いつつ
想いを悟られないように繕う

でも、
玄人が放った言葉で


私は奈落の底まで落ちていく...

『もうお前に俺は必要ないよな』

玄人が何を言っているのか
すぐには理解出来なかった

たった一つ
確かな事があるとするならば、

"君の眼はもう笑っていない"

(玄人が必要じゃない?
そんなの冗談じゃない
玄人がいないと...)

頭が混乱して
パンクしてしまいそうだった

「...玄人はどうなの?」

藁にもすがる思いで恐る恐る聞いた

(お願いだから
私が必要だって言って...)

ーーーーー、

(え、今なんて...)

信じたくなかった

玄人にとって


私はもう...





< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop