千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
俺は彼女をそっと抱き寄せると優しく抱きしめた。

「お兄様‥ありがとう‥」

彼女の頭を優しく撫で終わると俺はいつものように言う。

「はい、家族ごっこはお終いだよ。 
美術の宿題をしよう。」

「‥わかったわ、タロくん‥」

彼女も満足したように顔を上げた。

この儀式みたいな家族ごっこは、いわば彼女を罪悪感なく抱きしめるための大義名分の様なもの‥。

確か‥4年前くらいだったろうか‥急に彼女が俺に抱きしめてほしいと言った事かあった‥。
きっと寂しかったのだろう‥人恋しかったのだ。
だが‥
その時の俺は抱きしめていいものか躊躇したのだ。
今思えば‥何でためらったのかわからない‥。
それから彼女は、家族ごっこと称して抱きしめてほしいと言うようになった。
彼女は、俺をお兄様と呼んでくれる。
本当の兄とは触れ合った事もないだろうに‥。
こんな俺を兄にしてくれた。

俺は‥そんな愛しい彼女の為に生きている。
< 10 / 42 >

この作品をシェア

pagetop