千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
北條財閥‥

バカでかい屋敷と無駄に広い庭‥

どうすりゃ、こんなにでかい屋敷に住めるんだよ。

俺はこの屋敷に入った事はない。

そして主さえ見た事はない‥。

どんな人物達が住んでいるのか。

おれが知っているのは、屋敷の隣にある使用人専用の家と庭‥。

たったそれだけだ。

もちろん、知る必要なんてない。

何も‥知らなくていい。

俺は‥出ていくのだから。

早く‥早く‥時が過ぎればいい。

俺が屋敷から少し離れた庭園の茂みを通り過ぎようとした時‥

「‥うえ‥う‥う」

‥何だ?

「‥うえ‥」

茂みの奥からか細いうめき声がした。

ガサ‥

そっと茂みをかき分け奥に進んだ。

「‥う‥う」

小さな背中を震わせながら泣いている女の子‥

誰だ?

「‥‥‥お、おい‥大丈夫か?」

俺は、少し緊張しながら近づきその子を見た。


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