千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥ドキン‥

む、胸が‥

顔が‥熱い‥

あんなに堂々と千歌夏様を抱きしめた上に‥
頭を撫でて‥ 

なんて事を‥

トイレに入り水で何度も顔を洗う‥

こんな顔‥見せられない

熱る顔を押さえながら鏡の中の自分を見つめる‥

「‥千歌夏‥様」

また‥顔が‥熱くなる‥。

最近‥
抑えきれない感情が‥溢れてくる。
今も‥あと少しで暴走しそうだった‥。

欲しいだなんて‥
欲を出してはいけない‥

千歌夏様のお側にいられるだけで幸せなのだ。

同じ高校なんかにいるものだから‥
自分も同じような感覚になってしまう。
何てバカなんだ‥

さっきの態度‥千歌夏様が変に思ったかもしれない‥
早く戻って‥
いつもの俺に‥ならなくては‥
笑顔の練習をする。

手に残る彼女の感触‥温もり‥

ギュッ‥
手を握りしめ、もう一度手を洗う。

もう一度鏡をみるといつもの専属執事になっていた。


「千歌夏様、遅れてしまいましたので‥先生に体調が優れないと伝えて参りました‥」

「‥タロ‥くん」
千歌夏様が不安そうな顔で私を見つめる。

ニコ‥
満面の笑顔で千歌夏様を見る。

「‥タロくん‥ありがとう‥」

「いえ、それより‥私の方こそ申し訳ございません。千歌夏様‥ありがとうございました。」

笑いながら千歌夏様の顔を見つめる‥
すると少しホッとしたような表情になってくれた。

「‥ええ‥」

その瞬間‥
俺の付いている嘘で‥
千歌夏様が大きな誤解をしている事に
そして初めて気づいた気持ちから
不安になっている事に
不覚にも俺はまだ気づかないでいた。
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