呪イノ少女、鬼ノ少女
左右から遅い来る二匹の鬼の、四本の腕が間髪置かずに遅い来る。

隙を生む大きな動きは出来ず、必然的に必要最小限の回避行動を取るしかない。


「っのぉ、羽虫かなんかみたいにブンブンと！」


皮膚が裂け、流れ出した僅かな量の血が雨に解けていく。

幾ら肉まで届かない細かな傷とはいえ、それが全身に及べばかなりの失血に繋がる。

事実、わずか数秒の間に、茜の全身は元々負っていた傷に加えて、うっすらと細い線が幾重にも走り、そこから流れ出た血液で真紅に染まっていた。


「私を殺すのではないの？」

「これからだってば。慌てないでよ」


と、強がっては見たもののあまり楽観視できる状況ではない。

まず、肩の傷がいけない。

いくら半鬼とは言え、ほうって置けば命に届くほどに酷い。

雛子のことが心配で無数の魑魅魍魎の中をろくに防御もしないで特攻したせいだ。

それから、屋敷の中にいる娘。

信じてやりたいが、相手があの男では…



と、その時だった。

爆発めいた音が響いた。

直後、屋敷の障子が激しく吹き飛んで、飛沫を上げながら庭の隅まで転がっていった。

それと同じように小さな影も一緒に転がってくる。


< 163 / 182 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop