呪イノ少女、鬼ノ少女
「雛子!!」

「…つぅ、か、母さん」


喉が裂けるような金切り声に反応して、雛子は腹部を押さえたままヨロリと力なく起き上がろうとする。

その娘が抑える小さな掌の下から、ドクドクと流れる赤い液体。

斬られたのだ。


「ごめ、なさい…私弱くて、はっ、ぐぅ…」


どしゃっと膝から崩れ落ち、雛子は苦痛からくる嘔吐を堪えるように唇を噛み締めた。

雛子の周辺にはあっという間に真っ赤な大きい血溜りが広がる。


「くそ」


茜は捨て身の覚悟で鬼たちに背を向け、娘のそばへと飛ぶように駆け寄る。

だが何故か鬼たちは薄く笑みを浮かべあったまま、その大きすぎる隙を突こうとはしない。


「痛む?」

「うん。すごく、痛い」

「なら大丈夫。痛いってうちは死なないわ」


気休めにもならない言葉だが、雛子は無理矢理力なく笑ってみせる。

抱きしめてやりたいという想いが茜の中を衝いたが、そんな状況ではないと自制する。


「怪我はお腹だけ?」


コクリとうなずいて、雛子は茜から体を離した。


「無理しないで!体を預けなさい」

「大…丈夫よ」


噛み締めた歯の隙間から苦悶の吐息を漏らし、それでも雛子は片腕を地面について、儘ならない両足を張って立ち上がろうと試みる。

無理に力を加えたため、腹部の傷からはボタボタと冗談めいた零れ方で血が流れ出る。


「やめなさい!死ぬわよ!!」

「一人で…立てるから」



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