呪イノ少女、鬼ノ少女
嘘を吐いたわけではないのだが、後ろめたい。

何も知らない少女を騙してしまったようで、彼女の無垢な視線が痛かった。


「こう…網の付いた棒でボールをね…」

「ふーん、都会っぽいですねー」


都会っぽいの意味がいまいち分からないが、澪の本で得た知識を楽しそうに聞いている。


「いいなー」などと羨ましそうに言うのは、都会を知らないからだろう。

蠢く無数の雑踏。

乱立する無機質な固い街並み。

排気ガスに汚された都市の空気。

自然なんてどこにも無い。


それに比べて、ここは楽園だ。

人は少ないし、時代に取り残されたような木造の家屋。

空気は澄み渡り、そこら中に緑が繁っている。


喧騒を好まない澪には、こんな田舎の方がずっと性に合っている。


「こっちの方がいいよ」

「それ、持てる者の傲慢って言うんですよ?」

「私からしたら、雛ちゃんが持てる者なのに」


両者の意見は平行線。

互いの事情を知らないと、どうあっても分かり合えないものだ。

澪には田舎の苦労、雛子には都会の苦労が見えないから、互いを羨ましく思える。

だから二人の意見はどこまでも平行線だった。
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