呪イノ少女、鬼ノ少女
「私達は持てる者だから、無い生活なんて出来なくても問題は無いわ」


澪が難しい顔をしていたのに気付いて、九音はそう付け加えた。


「そんなことより、澪が見たいものはここよ」


そう言って、九音は家の一番奥の障子を開いた。

「ここは…」

「書庫」


その部屋の中には所狭しと本の山が積み上げられていた。

それはもう書斎というよりは書庫と言った方が適当なくらいに。


「お父様の過去に興味があるのでしょう?」


首を何度も縦に振ってから、澪は手当たり次第に本の山を漁り始めた。


「『火群村伝承集』、『土着信仰と支配形態』…それから『古代ギリシャの呪い』って何これ?」

正直、実にうさん臭い書物ばかりだ。

しかもどの書物も、なんども読み込まれてボロボロの上に、書き込みがたくさんある。


「な、何を調べてたんだろう?」


掘り出してみれば、黒魔術や果ては第九の呪いなんかについての本まである始末。

本当に父はここで何をしていたのか?


「想像出来ないや」


あの父がこんなオカルトに傾倒していたなどと。

父には誰か呪いたい相手でもいたのだろうか。



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