呪イノ少女、鬼ノ少女
鬼と戦い続けていた一族というのは事実だったのだ。

あの伝承は、ただ村を支配する為だけの手段ではなかったのだ。


「でもね…その伝承も九音ちゃんで終わるはずだったの」

「終わる?」

「そう。いろいろあってね…。もう鬼は出ないはずだったから」


茜は「いろいろ」と言葉を濁す。

おそらく外から来た澪には話せないことなのだろう。


「でもアレが出てしまった。こんなこと今まで一度だってなかったのに…」

「どうして…?」

「そ、その…原因は分かってるっす」


少し離れた所から、未だ緊張気味の大和が答えた。


「お…鬼封じの神木を中心に結んでいた…えと、その…結界が破られたんす」


鬼封じの神木とは、珠祭屋敷の後ろの山に聳える強い霊力を持つ樹の事らしい。

珠祭の当主はその神木を中心に、周囲に霊石を置いて結界を結び、そこに鬼を封じているらしい。


「結界の崩れた所はすぐに封じたんすけど…、気付くのが遅れたせいで見事に…」


大和は申し訳なさそうに膝を殴り付けた。

澪が襲われたのは、自分が遅かったせいと悔いているのだろう。

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