呪イノ少女、鬼ノ少女
「冗談は置いておくとして、縛り上げてでも学校に連れて行かないとねー」

「あ、冗談なんですね…」


と言うが早いか動くが早いか、茜は雛子に飛び掛った。


「ぎゃっ!?か、母さん、離して!」


「うるさーい!ほら、大和、そっちひっ捕まえなさい!!」

「了解ッス!」


茜が雛子の上半身を捕まえると、大和が暴れ狂う足を持ち上げてそのまま外へ運び出していく。


「あだっ…ス、スカートで蹴るな、雛子!!はしたねぇ、痛っ!?」



そんな大和の声が数回聞こえた後に、茜のバンの扉が閉まる音がした。


それからエンジンが中々かからない音がしていたかと思うと、今度は爆音と共に、二人の乗った車は飛び出していってしまった。




しばらくして、雛子に蹴られたらしい頬擦りながら大和がブツブツと愚痴を零しながら戻ってくる。


「イテテテ、あの暴力女め………あ、み、澪さん、お、おはようございます」


雛子の悪態を突いていた大和は、玄関に立ち尽くしていた澪に気付くと、必要以上に背筋を伸ばして、裏返った声で挨拶をした。


やはり、澪と話すのはどうにも慣れないらしい。


見た目だけなら女に目が無さそうな格好をしているのだが、本人はどうしようもなくウブらしい。


「おはよう、大和くん。大丈夫?」

「あ、はははい。大丈夫ッス」


かなり突っ込みどころの多い返事だが、澪は苦笑するだけで、あえて何も言ってやることはしなかった。
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