呪イノ少女、鬼ノ少女
「何で、あんなに?」


澪のイメージでは、雛子は学校が好きそうな明るい子だ。


引き篭もりなんて、とてもではないが雛子らしいとは思えなかった。


尋ねられた大和はしばらく「うーん」と首を捻ってから、声を潜めて言った。

茜達がいなくなった以上辺りは無人なのでそうする必要はないのだが、あまり声を大にして話す事ではないのだろう。


「実は……確証があるわけでも、雛子が言ったわけでもないんすけど」


大和はそのことをしつこい位に念を押すと、僅かに思案する間を空けてポツリと呟いた。


「多分苛められてるんっすよ」


「いじめって…雛ちゃんが?」


驚いた澪に対して、至極落ち着いた大和は何も言わずに深く頷く。


確証などなくても、おそらくそれが九分九厘事実に間違いないと。


「その…俺も火群にいつもいるわけじゃないっすから、あまり見たことは無いんすけど……あいつ、たまに青痣作ったり、顔をこんなに腫らして帰ってくるんすよ」


そういって、大和は少し大げさな位に、手でどれくらい腫れていたかを示した。


「もしかしたら、その…階段から転げ落ちたのかもしれないけど」


大和はそう言ったが、澪は力なく首を振った。


雛子はそんな間抜けを犯すような娘ではない。


「でも、何で?昨日みたいな力があったら……あ、そっか」


言いかけた言葉を飲み込んで、自己完結させる。

雛子が力で相手を従わせたりするような娘じゃないのは、澪がよく知っていることだった。
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