呪イノ少女、鬼ノ少女
渋々ながらもようやく体を起こしたのを見て、澪は溜息を漏らしながら扇風機を返してやった。


すると茜は今度は取られないようにと、腕の中に抱き込んで扇風機を回し始める。

その様はまるで、子供だ。


その姿に、さすがの澪もこめかみ辺りに痛みを感じざるを得なかった。


「どうして、雛ちゃんを助けてあげないんですか?」


「必要ないからよー」


茜は抱き込んだ扇風機に顎をのせ、縁側で揺れている硝子の風鈴を緩みきった表情で眺めている。


「必要ない、なんてどうして言えるんですか?」

「母親だから解るのよー」


一部の隙も無いやる気のなさの茜だが、あくまで母親面だけはするつもりらしい。


対して、澪は完全に呆れ返って、苦虫を噛み潰したように顔を歪める。


いくら恩人で、尊敬している茜といえども、この態度には幻滅した。


「そんなの母親なんて…」

「言うのよねー、これが」


風で浮き上がる前髪が気になるのか、茜は前髪を細い指で挟んで執拗に弄っている。
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