呪イノ少女、鬼ノ少女
「未練は残したくないしなぁ………ん?」


人の近付く足音がして、澪は顔を上げた。


見れば橋の向こうから、誰かが歩いてくる。


「雛…ちゃん?」


間違いない……雛子だ。


どうやら橋向こうにあるバス亭から、歩いて来たらしい。



しかし、何やら様子がおかしい。


腕を庇うように抑え、足を引きずるようにして歩いている。



まさか…、そう思った時にはもう澪の足は動いていた。


青臭い草の生い茂る土手を駆け上がって、橋の中程で雛子と向き合った。


「雛ちゃん!」

「ぇ……み、澪さん」


雛子は澪に気付いて、怯えたように体を震わせた。


そして、すぐに澪に背を向ける。


だが澪もすぐに回り込んで、雛子の肩を掴んだ。


「雛ちゃん、酷い怪我してるっ!」


腕や足がそこら中赤黒く腫れ上がり、端正な顔も酷く打たれた痕がある。


「学校でやられたの…?」


雛子は何も言わない。


だが、間違いないだろう。


やはり、大和の言った通りだったのだ。
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