冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
それどころかふたりきりになった途端に拒絶する言葉を吐いていた。

『この結婚に感情は一切ない』

その瞬間、奈月が傷ついたような顔をしたように見えた。

何度も彼女に恨みを晴らす想像をした。傷つけたい、そんな考えが過ったことすらある。

だが実際に奈月にダメージを与えた今、和泉の胸に過るのは喜びではなく苛立ちだった。

(こんなことを言いたいんじゃない。俺はただ……)

ただどうしたいんだ? 自分に問いかけても答えを見つけられない。

和泉が葛藤していると、奈月がぽつりと答えた。

『はい。政略結婚だと分かっています』

あくまで政略結婚……奈月を傷つけたはずなのに彼女の返事でダメージを受けているなんて皮肉だと感じた。

そんな自身に苛立ったせいか再び強い言葉が出た。

『お前にとっては不本意だろうな。あれほど俺と別れたがっていたのだからな。なぜ和倉愛理ではなくお前が選ばれたのか分かるか?』

『いえ……』

『俺は結婚を望んでいなかった。それでも妻を迎えなくてはならないなら、割り切れる相手がいいと考えた。お前なら労わりや気遣いなどしなくていいからな』
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