冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
彼も何か悩みがあるのだろうか。

そんなことを考えながら、和泉はゆっくり目を閉じた。

途端に脳裏に奈月との会話が浮かんで来た。

奈月の表情は気まずそうにしているか悲しそうにしているか。

以前とは、まるで別人のように和泉との間に壁がある。

別れたふたりなのだから当然だろう。ただ、自分の態度は。

(……最低だったな)

改めて自覚すると頭を掻きむしりたくなるような衝動に襲われる。

器の小さな自分が情けなくて仕方ない。

奈月に対して怒りを覚えるのも、彼女の反応一つに一喜一憂しているのも、まだ彼女を愛しているからだ。

あれほど希望なく振られたというのに、忘れられない。今でも彼女が欲しいと思う。

けれど受け入れられなくて気持ちを持て余していた。プライドが酷く傷ついたせいもある。

「はあ……」

和泉は溜息を洩らし、ハンドルに突っ伏した。

みっともない言葉を吐き強がっても、虚しいだけだ。

本当は彼女にもう一度振り向いて欲しい。その為には自分の本音を認めプライドを捨て政略結婚ではなく今でも愛していると伝えるべきだ。
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