冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
奈月が否定しても信用する気はないということか。和泉は小さく溜息を吐いた。

「……奈月には俺から話すからは余計なことはしないでくれ。検査の段取りも不要だ」

亜貴が信じられないといった様子で目を見開いた。

「まさか、検査をしない気なの?」

「……話はこれで終わりだ」

和泉は亜貴から目を逸らし、逃げるように部屋を出た。


いくら顔を合わせないようにしていても、同居していれば気配を感じる。

遠くに姿をみかけることもある。

顔色が悪いと心配になるし、彼女が何を考えているのか気になって仕方ない。

和泉の中でも答えが出ていた。

もし生まれて来る子が自分の血を引いていなかったとしても、奈月と結婚する。

司波家に関する権利は認められないだろうが、自分の子として育ててもいいと覚悟した。

奈月に対して本心をさらけ出せないくせに、別れは考えられない。結局彼女が求めているのだ。

和泉が決意を固めた直後、奈月本人が検査を受けると亜貴に申し出て速やかに実行された。

(何を考えているんだ? もし俺の子じゃなかったらどうする気だ?)

もしかして奈月は真実を明らかにしてこの結婚を破断にしようとしているのだろうか。
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