冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
先日よりも年若く見える気がしたが、見惚れるようなかっこよさは変わらない。
あの日彼に感じたときめきが、瞬く間に蘇る。
咄嗟に言葉が出ずに慌てる奈月に、彼はくすりと笑った。
「久しぶり。そんなに驚かれるとは思わなかった」
「あ……申し訳ありません。和泉さまがいらっしゃるとは知らなかったものですから」
朝、従業員でミーティングをしたが、広川社長は何も言っていなかった。
「ああ、広川さんに連絡していないからね。近くに用が有ったから立ち寄ったんだ」
「そうなんですね」
彼の服装から仕事ではないと思われる。だとしたら他のお客様と同様、初詣の帰りだろうか。
同行者はいないのかと彼の後ろに目を向ける。さり気ない動きのつもりだったが、直ぐに和泉に気付かれた。
「どうかした?」
「いえ、誰かご一緒なのではと思いまして」
「今日はひとりだよ」
和泉は柔らかく微笑んだ。あまりに優しい表情に奈月の胸は落ち着かなくなる。
(きれいな笑顔……)
ドキドキして直視出来なくなる。
(お客様にときめいてどうするの?)
少し、いやかなりかっこいい男性が来ただけで浮つくなんてプロ失格だ。
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