冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
(どうして私を誘ったの?)
オーダーを終えた和泉が奈月に目を向けた。しっかりと視線が重なった瞬間、ドキリと胸が高鳴り思わず逸らしてしまった。
(こんな態度じゃ感じが悪いと思われそう)
内心酷く慌てているのに、フォローする言葉が出て来ない。
(ああ、どうして私って……でも和泉さまが素敵すぎるのが悪いと思う)
そんな人に構われては、平然としていられない。
(だって勘違いしちゃうような、思わせぶりな態度なんだもの)
広川堂に迎えに来た時から和泉の眼差しは優しく、奈月に好意を持っているのではないかと誤解してもおかしくないものだから。
(でも……そんなわけないよね?)
彼の周りには美しく優秀な女性が大勢いるに違いない。それに初対面のときの酷い顔。
(むしろ避けられてもおかしくない。変に期待しても虚しくなるだけ)
悶々とひとり悩んでいると、和泉がくすりと笑った気配を感じた。恐る恐る顔を上げると、やはり彼は奈月を見て笑っていた。
「あ、あの?」
「ああごめん。奈月さんがあまりに表情豊かだからつい」
顔からぼっと火が出そうになった。そこまで顔に出ていたなんて。