冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「いえ、すみません、何でもありません」
「本当か? 遠慮しないで言ってくれ」
「ありがとうございます。でも本当に大丈夫す」
「そうか……」
和泉は少し沈んだ表情になったものの、すぐに気を取り直したように男性の紹介をはじめた。
「奈月さん、彼は俺の友人の五十嵐晋夜。司波商事の社員でもある」
「五十嵐です。今後顔を合わせる機会が増えると思います。よろしくお願いします」
先ほどまで奈月を値踏みするように見ていた晋夜だが、今はごく普通の態度で挨拶をした。
(友人で同僚?)
彼は仕事とプライベートどちらの立場でここにいるのだろうと考えながら挨拶を返す。
「和倉奈月です。こちらこそよろしくお願いします」
一通り挨拶を終えると晋夜は車を発進させた。これから和泉の言っていたフレンチレストランへ行くのだろう。
(五十嵐さんも一緒に食事をするのかな?)
友人と紹介されたからその可能性を考えていたけれど、彼は外で待機しているとのことだった。
奈月は和泉は細長いつくりの店内の奥に位置する個室に案内された。
彼とテーブルを挟み向かい合って着席する。
オーダーは和泉に一任した。彼がスタッフと会話をしている間、奈月は所在ない気持ちに陥っていた。
ここに来てまた例の疑問が浮かんで来たから。