冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「……一年以上前からです」

「っ! 聞いてないわ!」

叔母がヒステリックに叫んだので、奈月はビクリと肩を震わせた。

「お前、司波家がどんな家なのか分かっているのか?」

叔父の声は忍とは違い不気味な静かさがあった。

「司波商事の創業一族です」

「そうだ。彼は司波家の跡取りだ。お前が結婚出来る相手ではない」

底冷えするような冷ややかな目で睨まれ、背筋が冷たくなるのを感じた。

(どうしてこんなに怒るの?)

愛理よりも先に結婚することについて嫌味を言われるのは覚悟していた。奈月が幸せになるのを不満に思うだろうとも。だけど叔父叔母揃ってこれ程の怒りをぶつけられるとは。

(私の結婚が不満というより、相手が和泉だから?)

奈月が名門の資産家に嫁ぐのが気に入らないのだろうか。

(でもそれだけでこんなに怒る?)

長年の冷遇によって、奈月は叔父夫婦に反抗しないようになっていた。

嫌味を言われても黙ってやり過ごすのが結果的に一番被害が少ないのを経験で知っているからだ。

だけど今はだんまりを続けても解放されないような気がした。

叔父夫婦の怒りが普段とは別のものに感じるのだ。
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