サンタクロースに恋をした
「羨ましいな、平川さん。……私は、そんな風に思われたことないから。みんな、表面ばかり見て近付いてくる」
「それはさ、気付かなかっただけかもしんなくね?」
「え?」

 安藤くんなら、「うん、そうだね」って言ってくれるかと思っていたから、その言葉は意外だった。

「もしかしたら、誰か1人くらいは丸山さんの中身をちゃんと見てくれたかもよ? ……って、ごめん、俺丸山さんのことちゃんと知りもしないで説教じみたこと」
「う、ううん」

 むしろ、ちゃんと私と向き合ってくれているってことが分かって、ますます安藤くんに惹かれていく。

 先輩が平川さんのことを初めて好きになったように、今まで感じたことのない恋心を初めて安藤くんに抱く。

 安藤くんの言葉は私の心に屈折なく入ってきて、奥まで届く。初めての感覚。

「そろそろ、教室戻るかな」

 時計を見ると、もう少しで午後の授業が始まろうとしていた。昼休み、あっという間だった。

「うん。……安藤くん、ありがとう」
「話ならいつでも聞くよ。じゃ、先行くわ」
「またね」
 
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