【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
「どうかしたか?」

首を傾げたいっちゃんに、「なんでもないよ」と私は作り笑いを浮かべた。少し神経質になりすぎているかもしれない。

気を取り直すように、いっちゃんに尋ねる。

「そうだ。ちょっと早いんだけど、もうすぐ晩ごはんだから、いっちゃんも一緒に食べてく?」

我が家は泉に合わせて、毎日午後六時には食事が始められるように準備していた。

「俺はいいよ」

けれどいっちゃんはすぐさま遠慮した。

私はなんだかそれが引っかかり、渋い顔になる。

「いっちゃん、うちで全然ごはん食べないよね? もしかして、私の手料理やばそうって思ってるとか?」

「そんなこと思ってないよ」

いっちゃんは否定したけれど、私は腑に落ちなかった。いつも夜、仕事終わりにそのまま来ているときも、コーヒーを飲むだけで帰っていくのを変だなと、私はずっと気になっていたのだ。普通ならおなかが空いている時間なのにごはんを食べないなんて、絶対何かあるに違いない。

疑いの目をしたままの私に、いっちゃんは弱った表情になる。

「わざわざ言うつもりはなかったんだが、俺が来ることで莉帆に負担をかけたくないんだよ」

いっちゃんは観念したように呟いた。

私はとっさに目を瞠る。

「え?」

< 78 / 161 >

この作品をシェア

pagetop