【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
「たったひとりで子育てをがんばっている莉帆に、俺の面倒まで見させられない」

そういえば、いっちゃんが初めてここにやってきた日、晩ごはんは食べたのか尋ねると、俺のことは気にしなくていい、と言っていた。つい聞き流してしまっていたけれど、あれはそういう意味だったのだ。

私はずっと、いっちゃんの思いやりに気づけていなかった。

「……いっちゃん、ひとり分作るのもふたり分作るのもあんまり手間は変わらないんだよ」

目頭が熱くなるのを必死に堪え、私は口にした。

ごめんねいっちゃん、気遣ってくれてありがとう。その言葉は胸の内でだけ呟いて、私は軽口を叩きいっちゃんの心配を跳ね飛ばす。

「それに私はいっちゃんがいるからって、おかずを一品増やしたりしないんだから。いっちゃんの前で見栄を張るつもりないし」

「……ああ、そうだな」

予想外の反応だったのか、いっちゃんは一瞬虚を衝かれた顔をしたけれど、すぐに納得したように相槌を打った。

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