【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
そして私が大学四年生の二十二歳、二年前の冬のことだった。

なんとか就職先も決まり、春には犀川家を出て独り立ちするのが決まっていた。いっちゃんは二十七歳になっていて、すでに犀川グループの数社で代表取締役社長に就任していた。

その日、ベリーヒルズビレッジのオフィスビル五十四階にある高級レストランを貸し切って、犀川家の奥さま主催のディナーパーティーが開かれていた。

奥さまはパーティー好きで、毎月必ず何かと理由をつけては交流を楽しんでいたので、私はその日も同じようなものだと思っていた。いつもと違っていたのは、いっちゃんがそれに参加していたことだ。

私はパーティーの最中、奥さまから電話があり、至急届けてほしいものがあると頼まれごとをされ、会場に駆けつけた。

「莉帆ちゃん、急に呼びつけてごめんなさいね。お友だちにぜひ拝見したいと頼まれちゃって」

奥さまは私から品物を受け取り、お礼を言った。

私が届けたのは、世界にひとつしかないというアンティークの小さなオルゴールで、奥さまの友人は最近古美術や骨董品に興味を持ち始めたらしかった。かなり貴重なもので、私は持ち運ぶのに緊張したけれど、このくらいのものは犀川家にはゴロゴロ転がっている。これも鍵の付いていないキャビネットに保管されている程度ものだった。

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